2023.9.15
【その他】

お節介なおばちゃまのままでいる決意


前回のコラムの中で、階段を踏み外して怪我をしたことに少し触れました。上の写真でわかるように今も左足を「シーネ」と呼ばれるサポーターで固定して生活しています。

東京でお仕事をした帰り道、とあるインテリアショップさんのウィンドウを覗き込みながら、歩いていたところ、歩道に降りる階段があることに気づかず、思いっきり踏み外す、というドジな失敗をしてしまいました。

このエピソードについては鬼のくびをとったように、会社で話しまわったので、会社のみんながこれを読むと、「また、話してる・・・」と苦笑いされそうですが、私にとってこの事故は、とてもショッキングな出来事でした。

というのも。。。。。

大の大人が階段を踏み外して転んだのですから、それはそれは大きな音がし、その日に限って持っていたカメラバッグ、パソコンバッグ、そしていつものバッグの3つのバッグが地面に散らばり、大柄な私が、派手に地面に転がってしまいました。

あまりの痛みに、すぐに立つことができず、その場にしばらくうずくまってしまいました。

恥ずかしかったのでとても長く感じましたが、きっと数十秒間・・・くらいだったでしょうか。
悲しいことに、立てない私に、手を差し伸べてくれた人、声をかけてくれた人は誰一人いませんでした。

その後、自分で這うようにして自分が転んだ階段の隅に移動し、しばらくうずくまっていましたが、それでも声をかけてくる人は誰もおらず。。。

少し落ち着いて元気が出たところで、家族に電話をし、そして自分で救急車を呼びました。(正しくは、救急車を呼ぶかどうか迷った時にかける7119番にまずは電話をし、そちらの方が119番に繋いでくれました)

救急車が来た瞬間にその場所は黒山の人だかりとなりました。

声をかけてほしい、助けてほしい、というわけではないですが、こうして、倒れたり、困ったりした人が周りにいても、あまりにもみんな「無関心」であったことにショックを受けました。人ってこんなに冷たい???と。。。

「愛」の反対語は、「憎しみ」ではなく、「無関心」だ、とよく言われますが、言い得て妙です。
声をかけてこなかった人々は、転んだ私が憎かったはずもなく、ただ、「関心がなかった」のだろうなあと。

その後、松葉杖生活を経て、おかげさまで、今は、かなりよくなりました。

そして、その間に、たくさんのことを感じました。
もちろん、人の優しさに胸が熱くなった場面も何度もありましたし、相変わらず、人の冷たさや無関心を感じる場面も残念ながら何度かあり、夫とも「なんか世知辛い世の中だね」と話すことが幾度となくありました。

このエピソードを人に話すと、「きっと転んだ人に声をかけたら、その人が恥ずかしい思いをするから、気を遣って声をかけなかったのかもしれないね」と言う人もいました。

でも、今回のことでわかったのは、声をかけてもらった方がよっぽど恥ずかしくない。声をかけられずに、無視される方がよっぽど恥ずかしいし、悲しい。ということです。

私はどちらかといえばお節介なおばちゃんタイプです。

目の前で人が転べば「大丈夫?」と駆け寄りますし、
公共の場所で子供が騒いだりすると、他人の子供でも声をかけてしまいたくなります。
電車の中で席を譲るべきだと気づいた時には迷わず席を譲ります。
辞退される方もいらっしゃいますが、それはそれでよくて、断られたからといって恥ずかしいと思ったことは1度もありません。

ただ、たまに、「都会ではあまりこういうお節介は好まれないのかな」とか思うことがこれまでに何度かあったのは事実です。

んが!! 今回の経験を経て、これからもお節介なおばちゃんのままでい続けよう!と思いを新たにしたのでした。

みなさん、誰かが目の前で転んだら、せめて手を差し伸べて起こしてあげましょう。




Profile

黒川 早織
Saori Kurokawa
サラグレースオーナー
通訳・翻訳の仕事を経て、フレンチスタイルのインテリア雑貨を販売するオンラインショップを始める。のちに、青山、自由が丘、神戸など、実店舗をオープン。長い海外生活と、10年以上にわたるヨーロッパへの買い付けの経験をもとに培った独特のセンスと世界観が人気。